「舞鶴の里づくり市民の集い」講演集

〜みんなで考えようわがふるさと〜

日時:平成元年5月20日()午後1時

場所:常陸太田市市民交流センター 大ホール

 

G「『ふるさと創生』とまちづくりに思う」小沢勲(西二町)

行政の専門家でいらっしゃる方が多い中で、このような前へ立たされまして、何か大変面映い気持ちでおりますけれども、何故お引き受けしたかと申しますと、第1の理由は、私はこの町に生まれ、この町で育まれ、そして営業させていただいております。大変感謝しておるわけでございます。また、その上、この町が私にとって限りなく誇りにしておる町でもあります。私どもの次の世代も、この町に住んで、この町に育んでもらいたいと目下養成しているような次第であります。

2の理由ですけれども、今回担当されました行政の方々が、私のところへこられまして、大変迫力のある、私に「ノー」をいわせないような説得で、ぜひしゃべれということなものですから、まあ、説得されたというような次第であります。それを受けましたのがちょうど1ケ月前ぐらいだと思いますけれども、毎日がなんとなく受験勉強を強いられているようでございました。大変苦痛ではあったのでございますけれども、なんといいますか、せっかくの機会でございますから、受験勉強のために詰め込んだような知識でこの責を果たそうとすることは大変皆さんに無礼だと考えますが、お許しをいただきたいと思います。どうぞ、私が最後でございますので、あと10分だけ御辛抱いただきたいと思います。

今から述べる私の意見の資料でございますけれども、行政の方からはこういったものが事前に渡されたのでございます。すべて『ふるさと創生』の一環でありますところの『一億円』をどう使うかと言うことを決議された市町村の事例であります。約30市町村が決定されたとして記載されております。それから村づくり、街づくりというような自治省が推薦するような100の例が載っております。その項目すべてに目を通させていただきました。それから、もうひとつ、市には市民福祉総合計画というのが策定されているので、恥ずかしいんですけれども初めて読ませていただきました。

それから、これは私の私物なのでございますが、以前にNHkの教育テレビで、確か「現代都市への挑戦」といシリーズで磯村英一という方が講演をされていたのを見た記憶があります。その方が「人間にとって都市とは何か」という本を出しているんです。大変興味があって、56年前に買いました。600円です。それから、2年程前ですけれども、「まちづくりの発想」という事で、法政大学の田村明という先生が岩波新書から出しているんです。これもちょっと興味がありまして、2年程前に買いまして、読んだり積んだりして、適当に利用していたのですが、これは480円です。合計1000円くらいの資料でもって「1億円」の効果がいかにあるべきかを私は発表するのですから、何か程遠いような気がしますが、どうぞ、重ねて、お許しをいただきたいと思います。

最近、「21世紀はどうあるべきか」というような表現や言葉をよく耳にしますね。その21世紀っていったいどんなのかと、時々思うことがあるのですけれども、この本では、21世紀に向かう人間の目標は、個性、すなわち人間の尊重であろうと言っております。そして、都市こそはこの人間尊重を生かすための空間でなければならない。都市の空間の構成の中には、市民11人のが言葉や服装や行動がそれぞれ違うように、それぞれ個性を発揮するように、多数の人間のための生活の空間の表現が必要である。都市の人間はそのような共通の象徴となるような空間を持つことで、自分のその都市を自らの生活の中に意識するようになるのだというふうにまとめられているんですね。私はそう言う考え方、そう言う知識の中から大変失礼ですけれども、日ごろの私の家族との散歩コースを事例にとって意見を述べさせていただきたいと思います。

まず、スタートは市営駐車場であります。瓦葺の白壁の塀が新しい表情として私たちの町のワンポイントであろうと思います。それから、駅前の彫刻の広場が町の空間のひとつの顔を作ったように思います。それからバイパスが非常に効率的に開通されていますね。そう、その辺をぐるっと歩きましてから、最近開通されました舞鶴橋、これもまた私どもの新しい生活の場のひとつの空間に変化をつけたもののようにとらえることができると思うんです。

私はそう言う点は、一市民としてありがたい空間が、私どもの町の中に今までないそう言う表情が作られてきたなぁと思って、大変感謝もし喜んでもおります。しかしですね、もう一歩、そう言う一つ一つのところに、散歩しながらたたずんでちょっと思うことがあるんですよ、批評じゃありませんからご容赦いただきたいと思うのですけれども、。一方そう言うところで佇んで一息入れて見ますと、難しく言えば先ほど言った人間の尊重というべき、なんといいますか、優しさとか、思いやりとか、そう言う理念があのポイントに込められているのでしょうか。駅前の彫刻ゾーンでございますが、私はあの駅前の彫刻ゾーンをもっと引き立てるような玄関口を市民の力によって作りたいなと思うんです。それから、駐車場の白壁でございますが、あの塀を持つ町内のわれわれは、その塀を生かすような環境作り、例えばあの塀にあるような街路灯はどうだ、何か樹木はが欲しいんではないか、そして自分の家の塀を直すようなときにはあの塀を生かすように、あの塀に調和させていきたいというような話し合いをしたいと思っています。そう言う機会を望んでやまないのであります。

そして、舞鶴城の景観であります。いつもあそこへ行くと立ち止まるのですが、現代版の「太田落雁」とでも言うべき景観をわれわれに見せてくれると思うんです。しかしあそこを歩いて見まして、ちょっとひといき憩いたいなという思いのとき、そう言う私どものささやかな憩いの場をあの橋は提供してくださっているでしょうか。ちょっとしたベンチがあるとか、ちょっとした木陰があるとか、そう言う気持ちがあの橋の中に出ているでしょうか。ちょっと不満なんですよね。

それからずっと行って、源氏川、桃源橋を渡ります。「桃源」というのですから、人間の理想像があの橋を渡ると生まれてくるととらえるならば、あの桃源橋を越えた時に何か理想郷らしいアプローチ、桃源ですから、例えば桃の木の並木道なんていうのはちょっと粋だなって思いませんか。

それから、中学校から太田二高のいわゆる国体道路を散歩しますと、もちろん源氏川が流れております。あの源氏川をわれわれの故郷のせせらぎのように感ずるでしょうか。そう言う情緒があの源氏川に出ているでしょうか。二高の土手はコンクリートの絶壁です。そのコンクリートの下に山吹の花壇などというものがずうっと並べて作られていたらいかがでしょう。

バイパスにしても、町の中の道にしても、私どもの町の木は欅でありますから、どこかそう言う街路の中に「欅の道」などという名称の道があってもいいように思うんです。

512日でしたか、余談ですけれども、日立の小平会館で英国のウエールズの男性の合唱団の演奏会がありました。ちょっと行って見たんですけれども、司会者が外国の団員に「日立市にどういう印象を感じますか」という質問をなさった時に、その外人が、「緑に包まれた街路樹が多くて、ワンダルフルだ」と発言したんですね。その、緑が多い。と言うことがいかに町のイメージを風格付けているかを改めて感じました。

以上は私が家を出て、駅からずっと通っての私の散歩コースからの実感であります。ここにおいでの皆さんがそれぞれ自分の回りで私と同じような感覚で散歩なされたならば、おそらく太田の全体像の散歩コースが完成されていくのではないでしょうか。だとしたら、「わが町自慢の散歩ゾーン」なんていうテーマでふるさとをつくるのもひとつの方法かなというふうにスタートさせていただきたいと思っております。

散歩などといいますのは、私もそろそろ初老のわが身でございますので、特にそういう点を感じた次第であります。

先ほどちょっと市長がふれましたけれども、あるまちが1億円の金塊を購入して資料館にのおいたというんですね。それを観光の目玉にした。そうしましたら、金箔入りのコーヒーです、金箔汁の入ったうどんです、というようなことで、非常にその町の活性化につながったという記事を読んだ皆さんもいらっしゃるかと思います。しかし、私はそういうことでそこに住む市民の人間性が育まれていくのでしょうか。私はこんな「1億円」の、そして「1億円」になんとなくこびた亡者のような利用の仕方は市民として反対です。とかく今日までの行政と市民のあり方を自分なりに思ってみますと、行政が計画して、国や県が補助して、それらを作り上げていく。市民参加のコミュニティづくりがなんとなくばらばらであったような印象をもっているんです。

そこで、この「ふるさと創生」を機会に、私どもの町の総合計画に述べられておりますように、第1には市民と行政体との信頼関係を回復させて、第2には行政体の中をまちづくりの仕組みとして有効に機能するように変革させていただき、第3には行政体の職員にまちづくりの仕組みを運営するスタッフとしての意識をもっていただいて、第4には市民もまたこの組織を活用する責任ある市民への意識と行動を高めることが今私たちに求められ、創られるべきことのように考えてお願いしたいと思っております。

昨年の暮れでしたが、私は市民同士の呼びかけから誕生いたしました「第九を歌う会」のメンバーとしてベートーベンの第九を歌いました。「第九っちゃ一体何だ」という声もあったようでありますけれども、演奏の反響は太田であんな歌ができたのかというような専門家の評価であります。もちろん市長や県議夫妻からも、そして多くの市民の方々と共に、私たち歌う側も、聞いてくださった側も、一つとなってその感動にひたりました。お互いに温かな言葉が飛び交いました。そういう美しい心を育むような方向こそ普遍的な「ふるさと創生」の泉ではないでしょうか。

どうぞ、まちの本質を失わせることなく、また一部の利益につながるような計画ではなく、私たち多様な市民が共用できて、共感の持てるまちづくりを、息の長い未来へ向かって作業を進めていただきたいと訴えたいと思います。

最後に余計なことですが、「諸君」の6月号によりますと、この「ふるさと創生・1億円」のアイデアは、私たち地元出身の梶山自治大臣の折に、梶山大臣のアイデアによって出されたそうだと書いてあります。代議士は愛郷無限の心でありますから、そのお膝元である私どもはその運用についてはいかにも大臣らしく、いかにも愛郷無限に近い運用を図るべきだろうと思っております。

大変、身に余るような機会を与えていただきましたけれども、受験生○×のような意見発表をさせていただきまして、大変無礼申し上げました。

ありがとうございました。